多彩な点も産婦人科の特殊性のひとつに挙げられるかもしれませんが、もう一点産婦人科の特殊性として大きなものは、診療の対象が胎児(受精卵も)からという点です。産婦人科医は、自己決定ができない受精卵や胎児に対しても、診断や治療といった医療行為を施すことになります。ここで、着床前診断、出生前診断、胚の選別、中絶などという重い問題にも遭遇します。こういった医療行為には、生まれてくる子供の福祉、母体の安全などの観点から一定の妥当性や必要性、また反対や心配の声と様々な意見があることは否定できません。
当然、こういった問題に関わる相談に受診する患者の相談理由は多様です。また、ほとんどの相談者は、こういう問題に遭遇し対処した経験が豊富ではなく、多くの先入観、不安に囚われていることも少なくありません。
産婦人科医は単に患者の求めに応じて医療技術をそのまま提供するのではなく、これらの患者の自己決定において、患者の思い込みや誤解に適切なアドバイスをしながら、しかしながら意見の押し売りをすることなく、時には看護師、助産師、心理士、小児科医、遺伝専門医やカウンセラーとも連携をとりつつ支援することが重要となります。
こういった問題を患者と共有し支援した患者が数年後に幸せな家族と顔を見せてくれるといのも産婦人科ならではの経験かもしれません。現場から幅広く、多くのことを考え、学ぶことができます。
編集長より非常に難しいテーマ(産む選択、産まない選択)を与えられ、言葉の選択までしながらになってしまい、ややファジーな内容になってしまいました(笑)