プロフェッショナル

長良医療センター 周産期診療部長 川鰭市郎

「最強ドクターが救った家族の絆スペシャル」10年前にフジテレビで放送されたドキュメンタリーです。長良医療センター産科が全国に紹介された最初の番組でした。その後、NHK岐阜の「妊娠の喜びを守る」、テレビ朝日の「発見人間力!」、そしてNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」と全国放送のドキュメンタリーが次々に放送されました。この間には全国紙を含めた新聞などにもたくさん記事として取り上げてもらいました。長良の産科が取り上げられただけじゃなく、周産期医療の現状やあるべき姿、さらに医療そのものの問題についても長良医療センターを通じて報道されてきてます。
 なぜ長良の産科が注目されたんでしょうか。胎児治療という先進的な医療を実践していることももちろんあるとは思いますが、産科医療の崩壊が危惧される中で若手が活き活きと働く産科ということが最も大きかったんでしょう。しかもその病院が東京ではなく、岐阜という地方都市の病院だったことも少なからず影響したと思います。
 いろんなメデイアの人たちが長良医療センターに取材にやってきました。みんなが驚くこと、それは岐阜がコンパクトにまとまっているということなんです。母体搬送しようと思うと、大都市では救急隊が搬送先を探すんです。その結果、たらい回しという言葉で表現されるような事態が発生するんですが、岐阜ではそんなことは皆無です。搬送が決定した時点で、搬送先はすでに決まってます。岐阜という地方だからこそできたシステムなんです。大都市には病院がたくさんあるので、自分のところで搬送を引き受けなくてもなんとかなるんじゃないか、こういう感覚が蔓延してました。そんな中で、頭蓋内出血の妊婦さんが死亡するという事件が発生したんです。私を含めて8人の産科医がコアメンバーとなっている日本産科医療協議会では、この事件に声明文を出しました。ホームページ(http://jaop.umin.jp/)にその全文が掲載されてます。この声明文はメデイアでも大きく取り上げられました。そして、なんと亡くなった妊婦さんのご主人からコメントが寄せられたんです。このコメントもホームページに掲載されてます。
 長良医療センターの取材にやって来たメデイアの皆さんには、何も隠すことなくすべてを見てもらってます。報道できないんじゃないかという部分さえも見てもらうんです。見てもらった上で、これは報道できると思いますか、と聞いてみることにしてます。そうすると、報道はちょっと無理ですねということになり、またなぜそういう状況に対応しなければならないのかをメデイアの皆さんにきちんと理解してもらえるんです。
 長良医療センター産科は岐阜という地方だからこそ、注目を集めることができました。地方発信の情報だからこそ、意味があるんです。新しいものは海の向こうからやってくる、小説「坂の上の雲」にはそういった意味の言葉がありました。これは鎖国をしていた日本が世界に目を向け始めた時代の話です。もう新しいものが向こうからやってきてくれる時代じゃありません。中央から、しがらみから離れて自由に動ける地方からこそ、新しいものが次から次へと産まれてくる時代です。長良医療センター産科の意義も、そう考えてもらえれば分かりやすくなりませんか。だからこそ、メデイアに注目されたんです。そして、次世代に向かってさらに新しいものを作り出していかなければならないんです。土台はできました。さあ、これからです。10年後の岐阜の周産期診療は皆さんに託されているんです。

夢プロジェクト「ぎふの産婦人科医の魅力」岐阜県、産婦人科医、医学生向けイメージ01
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