みなさんは、ハーブや紫蘇(しそ)などの匂いのする植物はお好きですか?
女性の方は、ほとんどの方が好きと答えられるでしょうし、男性の方は、どちらかというと嫌いという方が多いでしょう。
アロマセラピーでわかるように、匂いのする植物は、精神を安定させる効果があります。
女性は、毎月、月経を迎え、妊娠・出産を経験し、子育ても主に担わなければならいため、動物的、すなわち、感情的にならざるを得ないですから、本能的に、匂いのする植物を求めているのです。
匂いがしたり、様々な味の植物や鉱物などを加工したものが、漢方薬(herbal medicine:ハーバル メディシン)ですから、男性よりも女性の方が漢方薬が効きやすいのでしょう。
ところで、身近な女性が特別な理由もなく怒ったり、いらいらしたりしているのを見たことがありませんか?もしかして、自分がよくそういう状態になるという女性の方もみえるかもしれません。
それは、月経前症候群(PMS)といって、月経前に発症し、月経が来ると症状が消失する病態です。通常は、ピルやSSRIなどの向精神薬の適用ですが、両者とも飲み初めに悪心などの副作用がありますし、ピルの場合は、排卵を抑制するわけですから、妊娠を希望する場合は、適用になりません。
そこで漢方の出番です。
加味逍遙散という漢方を内服すると、いらいらなどをあまり感じずに月経を迎えられることがよくあります。
月経前になると、彼氏さんやご主人、お子さんに当たったり、物を投げたり(!)していた女性も、PMSを発症しないため、人間関係が非常によくなり、好循環を生み出します。ほとんどの女性が、家族やパートナーから、「漢方だけは続けて飲んで」と諭されるようです。
加 味逍遙散は、更年期障害にも効果を発揮します。
冷えのぼせや発汗、動悸などに適用があります。
そのような症状があり、覇気がない感じの更年期の女性に加味 逍遥散を内服してもらったところ、2週間後の再診時には、髪形や衣装までかわって、まるで別人のようになられる方もよくみえます。
不定 愁訴(原因不明の身体の不調)の患者さんが外来にみえたら、どうされますか?「気のせいでしょうから、そのうちよくなりますよ」と言ってしまったら、患者 さんは減ってしまうでしょう。
そういう時も、加味逍遙散などの漢方薬を処方すればいいんです。
効果がなかったら、漢方薬を変更すればいいだけです。
要は、患者さんと一緒になって、Try&Errorの精神で症状改善を図るのが漢方の醍醐味です。
以上、産婦人科の漢方について述べましたが、最後に、ひとことだけ強調したいのは、「まず、漢方薬を使ってみましょう」ということです。
女性のQOL改善のために、今度、漢方薬がますます使用されることを願って、筆を置こうと思います。