岐阜にくるきっかけ、新しいライフプラン

長良医療センター産科 千秋里香

 「医師」をめざしたきっかけは人それぞれだと思います。それでも多くの人が、「人に感謝される仕事をしたい」と考えているのではないでしょうか?私もそうでした。そして高校生のときに読んだ尊厳死に関する本に影響を受け、「人の死」と同時に「生命の誕生」に興味をもったのが、産婦人科医をめざしたきっかけでした。


 大阪の医大を卒業し、まずは地元の大阪で研修を始めました。1年目の産科研修では、毎日昼夜を問わず大変でしたが、「おめでとう」といえて感謝してもらえる喜びがありました。しかし待っていたのは、幸せいっぱいの妊婦さんばかりではなく、重篤な胎児異常の宣告や、死産してしまったお母さんへのケアなど、「誕生」と同時に「死」をみないといけない現場でもありました。切迫流産で何ヶ月も入院していたお母さんが結局流産してしまった時、無力感から「もう産婦人科はやめよう」と思いました。しかしその流産されたお母さんから、「ありがとう。次に妊娠したときにもお願いします。」と声をかけて頂いたのです。びっくりすると共に、流産されたお母さんのひとことで、逆に私が元気をもらいました。このように悲しい思いをするお母さんを、一人でも減らしたい。そこが私の産科医としての原点でもあります。


 日々の症例に悩むなか参加した学会での出会いがきっかけで、全国でも有数の胎児治療も行う周産期施設の長良医療センターへ、勤務させて頂くことにしました。日々遭遇する症例は、今まで以上に困難な症例の連続。しかし医師も助産師もその他コメディカル皆が活気にみちあふれ、すてきな笑顔で仕事をしており、新しい場所に慣れるのにさほど時間はかかりませんでした。ただ教えてもらうだけでは通用せず、自分の意見も求められます。抄読会や学会発表も頻繁にありました。プレッシャーでしたが、これが自分自身の勉強につながったと思います。
 重症例がいてもオンとオフがきっちりしており、休みにはよくでかけました。岐阜からは名古屋へも近いし、郡上、下呂、高山といった観光名所も日帰りで出かけることができます。そして私が岐阜に来て始めたのは、ランニングでした。岐阜城と長良川を眺めながら走ると、とても爽快な気分になります。大阪から来た私に岐阜での知り合いはいませんでしたが、マラソンを通じて様々な人と出会いました。今話題のワークライフバランスがうまくいくようになり、それをきっかけに、結婚、妊娠を経験しました。今後はプライベートの時間がさらに必要になりますが、その経験を仕事に生かし、これからも産科医療に携わっていきたいと思っています。


 周産期医療は10年前と比べると、常識が覆されるくらい変わりました。10年前にはあきらめるしかなかった小さな命も、今では後遺症無く元気に育っています。しかしまだまだ発展途上。さらに10年後を変えるのは、若手医師の仕事です。先輩達の築きあげたものをさらに発展させる、そこには熱い想いが必要です。産婦人科は「人に感謝される仕事」であり、「生命の誕生」から「人の死」まで一生をみる分野でもあります。日本の中心である岐阜から、熱い想いで周産期医療を担い、日本にそして世界にはばたく人材が育つことを楽しみにしています。

夢プロジェクト「ぎふの産婦人科医の魅力」岐阜県、産婦人科医、医学生向けイメージ01
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