「胎児記憶と分娩経験」
胎児記憶というものがあるかもしれないそうです。赤ちゃんが分娩中の感情を記憶していて、言葉を話すようになってから、この経験を語り始める。とてもロマンチックなことです。胎児も人間ですから、感情や記憶があってもおかしくないかもしれません。分娩中の感情や記憶が、その赤ちゃんの未来・母子関係・健康に強く影響すると私は信じています。だからこそ、その経験を大切にしたい。
人は何万年も前からお産を繰り返しながら、途切れることなく今に至っています。そんな神秘に向かい合うのが産科医の仕事です。周産期だけでなく、人生のすべてに関わる、そんな仕事なのです。
「縁の下の力持ち」
お産は結果が大事だと考えています。トラブルが発生したときに鮮やかに解決するのではなく、トラブルを最小限に抑え、素知らぬ顔をすることが周産期医療の醍醐味です。
その努力は、お産の神様だけが知っています。
「いいチップもらっちまった」
眠たい夜もあります。そんな夜中の分娩に限って、「私はこの子に会えて幸せです。また先生にとりあげてもらいたい」なんてチップが支払われます。
「目の前の患者しか救えない」
私はまだまだ未熟者で、目の前の患者のことで精一杯ですが、自分が頑張ってよかったと思える出来事にも出会います。これからはもっとそんな出来事を増やしていきたいです。それでも、自分の手が届かないところで困っている人がいたら・・・傲慢ではないですが、そこに自分がいたらなんとかなったかも。経験と知識を積み重ねるごとに、そんな風に思うことがあるかもしれません。
でも、そこに自分と同じ志の仲間がいたら・・・同じ志を持つ仲間がいれば、目の前の患者以外も救えるようになる。私は、そんな仲間とつながる岐阜の周産期医療を夢見ています。この文章を読んでくださったあなたが、私たちの仲間となって、夢が現実となる日を待ち望んでいます。